マレーシアで生活していると、住宅の屋根や集合住宅の壁に取り付けられた白い丸型アンテナを至るところで見かけますよね。あの「Astro」のパラボラアンテナです。マレーシアの風景に溶け込んだあのアンテナを見て、「みんな使っているんだな」と感じた方も多いのではないでしょうか。
そのAstroが2026年第1四半期(2〜4月)の決算で、驚くべき数字を発表しました。コア純利益が前年同期比97.8%の暴落——つまり、利益がほぼゼロになったのです。
Astroとは?——日本でいうスカパー!
Astroは1996年創業のマレーシア最大の衛星放送・有料テレビ事業者です。マレー語、英語、中国語、タミル語など多言語のチャンネルを提供しており、スポーツ・映画・バラエティ・ニュースまで幅広いコンテンツが揃っています。
日本でいえばスカパー! とNHK衛星放送を合わせたようなサービス。マレーシアの多くの家庭でテレビ視聴の中心として長年使われてきました。
衝撃の決算数字
| 項目 | 2025年Q1 | 2026年Q1 | 変化 |
|---|---|---|---|
| コア純利益 | 約RM 1,420万 | RM 31.3万(約1,236万円) | ▼97.8% |
| 売上収益 | RM 7億309万 | RM 6億5,962万(約260.5億円) | ▼6.2% |
| 税引前損益 | 黒字 | RM▲424万(約▲1.67億円)損失 | 赤字転落 |
| 配当 | あり | なし | — |
※1RM = 39.5円(2026年6月15日時点)
コア純利益がRM 31.3万(約1,236万円)というのは、売上高260億円規模の企業としては実質ゼロに等しい数字です。日本の上場企業でこれほどの利益率(0.04%)はほぼありえません。配当もゼロと、株主にとっても厳しい四半期となりました。
なぜこんなことに?——ストリーミングの嵐
Astroの苦境の主因は明らかです。Netflix、Disney+、YouTubeといったストリーミングサービスの台頭です。
| 要因 | 数字 |
|---|---|
| テレビ部門売上 | RM 6億2,080万(約245.2億円)に▼7.3% |
| 購読収益 | ▼8.1%(加入者離れ) |
| 広告収益 | ▼18.0%(広告主もデジタルへ移行) |
| ユーザー平均収益(ARPU) | RM 98 → RM 93.90(約3,709円) に低下 |
広告収益が18%も落ちたことが特に大きく、広告主がテレビからYouTubeやSNSへ予算をシフトしているトレンドを如実に示しています。
日本でもテレビ視聴率の低下が叫ばれて久しいですが、マレーシアではスマートフォン普及率の高さと安価なモバイルデータ通信(月RM30〜50程度)が組み合わさり、ストリーミングへの移行がより急速に進んでいます。「衛星アンテナを屋根につける」より「スマホ一台でNetflixを見る」方がずっと手軽、というわけです。
唯一の明るいニュース:ラジオ部門
テレビ部門が惨憺たる結果の一方、ラジオ部門は17.6%増(RM 3,880万 / 約15.3億円)と好調でした。これは今年の旧正月(春節)の時期がQ1に重なったことで、中国語ラジオへの広告出稿が増加したためです。
ラジオのウィークリーリスナー数は1,620万人とほぼ横ばいを維持。「テレビは不要でも、ラジオは車の中で聴く」という生活習慣が根強く残っています。渋滞が多いKLでは、車内でラジオを聴く時間が長くなりがちですよね。
日本人向けメモ
Astroは契約すべき?
マレーシア在住の日本人にとって、Astroは選択肢の一つですが、現在は必須ではないかもしれません。
| サービス | 月額費用 | 日本円換算 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| Astro(基本パック) | RM 30〜59 | 約1,185〜2,330円 | 多言語TV・スポーツ・映画 |
| Netflix | RM 17〜35 | 約672〜1,382円 | 日本語コンテンツ豊富 |
| Disney+ | RM 29.90 | 約1,181円 | アジアコンテンツ充実 |
| YouTube Premium | RM 18.90 | 約746円 | 広告なし動画 |
日本語コンテンツを重視するならNetflix(日本のドラマ・アニメが充実)、マレーシアのローカルTV番組も楽しみたいならAstroと組み合わせるのも手です。サッカーなどスポーツ観戦が目的であれば、Astroのスポーツパックは依然として強みがあります。
今後のAstroは?
97.8%の利益急落は、会社の戦略転換を迫る深刻なシグナルです。コンテンツの差別化か、価格競争か、ストリーミングプラットフォームへの転身か——Astroの次の一手が注目されます。
日本のフジテレビやテレビ朝日も視聴率低下に苦しんでいますが、マレーシアのAstroはまさにその「次のステージ」を今まさに生きています。マレーシアのテレビ業界の行方は、日本のメディア業界の未来を映す鏡かもしれません。
出典: China Press の情報を元に、日本人在住者向けに独自作成した記事です。価格・条件は変更される場合があります。最新情報は公式サイトでご確認ください。


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