マレーシアで事業を始めようとしたとき、「担保がないから融資を断られた」という話を聞いたことはありませんか?
じつは、この問題はマレーシアの中小企業(SME)や新興企業が長年直面してきた壁です。2026年8月、マレーシア国立銀行(Bank Negara Malaysia、以下BNM)がついに動きました。「従来の信用評価は時代遅れかもしれない」と公式に認め、新しい信用審査の枠組みへの移行を宣言したのです。
「担保がなければ借りられない」という壁
日本でも中小企業が銀行融資を受けるには保証人や担保が求められることが多いですが、マレーシアも事情は似ています。従来の審査では、不動産や機械などの有形資産(担保)と、長年の取引実績が融資判断の中心でした。
しかし、これが大きな問題を生みます。
- スタートアップ企業:創業間もないため信用履歴がほぼゼロ
- 資産軽量型ビジネス(アプリ開発、コンサルタント、フリーランス等):担保にできる不動産や機械がない
- 急成長中の小規模事業者:キャッシュフローは良好でも、過去の決算書が薄い
BNM総裁のダト・スリ・アブドゥル・ラザク氏は「金融機関は慣れ親しんだビジネスや従来の担保だけに依存することから脱却すべきだ」と明言しました。日本でいえば、金融庁が「事業性評価融資」を推進している流れと、発想は近いかもしれません。
新しい審査基準:何が変わる?
| 従来の評価軸 | 新しい評価軸(移行予定) |
|---|---|
| 不動産・機械などの担保資産 | キャッシュフローの安定性 |
| 過去の信用履歴(長期) | 電子インボイス(e-invoice)記録 |
| 財務諸表・決算書 | 取引・決済データ |
| 既存の取引銀行との関係 | サプライチェーンデータ |
| 長年の事業実績 | 支払い行動パターン |
要するに、「過去の資産」よりも「現在のビジネス力」で評価しようという発想の転換です。デジタル取引データや電子インボイスが、従来の担保の代わりに信用力の証明として機能するようになる可能性があります。
RM100億(約3,890億円)の保証制度がスタート
新しい信用評価の枠組みと並行して、BNMとCGC(Credit Guarantee Corporation、中小企業信貸担保機構)は2026年6月、RM100億規模の保証スキームを開始しました。1RM=38.9円(2026年8月11日時点)で換算すると、約3,890億円規模です。
保証制度の対象
| 対象カテゴリ | 内容 |
|---|---|
| マイクロ企業 | 零細・個人事業主レベルの小規模事業者 |
| スタートアップ | 創業間もない新興企業 |
| サステナビリティ投資企業 | 環境・ESGへの持続可能な取り組みを行う企業 |
| イノベーション・戦略分野 | テクノロジー、デジタル等の先端領域 |
| 食料安全保障関連 | 農業・食品産業への投資 |
| 外的耐性強化企業 | 国際情勢変化に対応するための事業強化 |
この制度には世界銀行の技術支援も入っており、マレーシアの信用保証フレームワーク全体の底上げを目指しています。
日本との比較:SME支援制度の違い
日本にも中小企業向けの融資保証制度(信用保証協会)があります。BNMの新制度と比べると、特徴の違いが見えてきます。
| 比較項目 | マレーシア(CGC新制度) | 日本(信用保証協会) |
|---|---|---|
| 審査の主軸 | キャッシュフロー・デジタルデータ重視へ移行 | 財務諸表・信用情報重視 |
| スタートアップへの特化 | 明示的に対象カテゴリとして列挙 | 特定の創業融資制度あり |
| e-invoiceの活用 | 信用評価データとして活用推進 | 電子帳票整備は進行中 |
| 国際支援 | 世界銀行の技術支援あり | — |
| デジタル決済データ活用 | 取引記録・支払い履歴を審査材料に | 一部フィンテック系で先行 |
日本では信用保証協会という長年の仕組みがあるため改革は漸進的ですが、マレーシアは今回の改革でデジタルデータ活用という点で一歩先を行く可能性があります。
日本人起業家・在住者へのメモ
マレーシアで起業を検討している日本人の方、またはすでにビジネスを展開している方にとって、この改革は見逃せない動きです。
起業を検討中の方へ:
– 担保不足で融資が難しかったアイデア型・サービス型のビジネスにも、今後は道が開ける可能性があります
– スタートアップとしてCGCの保証制度を活用することを視野に入れてみてください
すでに事業を運営している方へ:
– 電子インボイス(e-invoice)の整備が信用力アップに直結します。マレーシアではe-invoiceの段階的義務化が進行中なので、早めの対応が有利に働く可能性があります
– GrabPayやTouch ‘n Go(TNG)などデジタル決済の取引記録も、将来の審査材料になりうる素地が生まれています
注意点:
外国人(永住権保有者以外)がマレーシアの銀行融資を単独で受けるには現在も制約があります。詳細はCGC公式サイト(cgc.com.my)や主要商業銀行(Maybank、CIMB、Public Bank等)に直接お問い合わせください。
まとめ
「潜在力はあっても担保がないから借りられない」——この長年の課題に、マレーシアの中央銀行がついに正面から向き合いました。デジタルデータを信用力の証明として活用する新しい審査の方向性は、スタートアップや若い起業家にとって大きなチャンスになるかもしれません。
RM100億規模(約3,890億円)の保証制度と合わせて、マレーシアのビジネスシーンが大きく変わる転換点になりそうですね。
出典: China Press の情報を元に、日本人在住者向けに独自作成した記事です。価格・条件は変更される場合があります。最新情報は公式サイトでご確認ください。


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