マレーシアの自動車産業が、いま大きな転換点を迎えています。国産車ブランド「プロトン(Proton)」と中国大手「奇瑞(チェリー/Chery)」の現地生産拡大に向けて、マレーシアの部品メーカーが約9,680万リンギット(約38.3億円)という巨額契約を獲得しました。
「クルマの座席の話が、なぜ日本人に関係あるの?」と思った方、少しお付き合いください。この契約の背景には、マレーシアの自動車市場が「日本車時代」から「中国車時代」へと静かに変わりつつある大きな流れがあります。
今回の契約の概要
今回の主役は、ブルサ・マレーシア(マレーシア証券取引所)に上場する飞达控股(フェイダ・ホールディングス)。同社のGosfordレザーインテリア事業部が、プロトン新型モデル向けシートカバーの大型供給契約を獲得しました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 契約金額 | 9,680万RM(約38.3億円)※1RM=39.6円(2026年5月4日時点) |
| 契約開始 | 2026年7月(第3四半期) |
| 供給対象 | 奇瑞の既存2モデル+新型2モデル(計4車種)のシートカバー |
| 生産拠点 | セランゴール州スバンの専用工場(FTRT Autoparts) |
| プロトンとの関係 | 2012年から取引継続中 |
生産は合弁会社「FTRT Autoparts」が担い、奇瑞のCKD(完全ノックダウン=現地組立)による現地生産を支えます。
プロトン×奇瑞とは何者か?
プロトンは1983年設立のマレーシア国産車ブランド。日本でいえば「国民車」的な存在でしたが、2017年に中国の吉利(ジーリー)グループに買収され、現在は中国資本のもとで刷新が続いています。
奇瑞(チェリー/Chery)は中国の独立系自動車メーカーで、BYDほど有名ではないものの、マレーシアでは「Omoda」「Jaeco」ブランドでSUVを展開中。価格と装備の充実度で若い世代を中心に支持を集めています。
日本の自動車産業と比べると?
日本にはトヨタを頂点とした「系列(ケイレツ)」構造があり、デンソーやアイシンといったTier-1サプライヤーが安定的に受注する仕組みが確立されています。マレーシアでも似たような構造が育ちつつありますが、その中核に「中国ブランドの現地化」という新たな潮流が加わっているのが特徴です。
| 項目 | 日本 | マレーシア(現在) |
|---|---|---|
| 主要国産ブランド | トヨタ、ホンダ、日産 | プロトン(吉利傘下)、ペロドゥア |
| 代表Tier-1サプライヤー | デンソー、アイシン、豊田合成 | 飞达・Gosford、AP Ventures 等 |
| 近年の変化の軸 | EV化・カーボンニュートラル | 中国資本の参入×CKD現地化 |
| 生産方式 | 完成車輸出が主流 | CKD組立が急拡大中 |
CEOのWu Keni氏は「Tier-1サプライヤーとしての事業統合、生産能力の最大活用、長期的な収益安定」を戦略として掲げています。日本流に言えば「量産効果による安定受注モデルの確立」です。
なぜ今、マレーシアで中国車が増えているのか
2023年以降、マレーシアの新車市場では中国ブランドの台頭が顕著です。BYD、奇瑞(Omoda/Jaeco)、深藍(Deepal)など、かつて日本車・韓国車が強かったSUVセグメントに次々と参入。価格帯はプロトンと競合しながらも、360度カメラやADAS(先進運転支援)などの装備が充実しており、コスパの高さが評価されています。
マレーシア政府の「自動車産業マスタープラン」でもCKD化(現地での組立・部品調達率向上)が推奨されており、今回のような「中国ブランド×マレーシア部品メーカー×プロトン供給網」という三角関係が今後も増えると予想されます。
日本人向けメモ:マレーシアでクルマを選ぶなら
- 中国ブランド車はカメラ・ディスプレイなどの先進装備が豊富で価格が安い。ただしアフターサービス網はまだ拡充中のため、長期利用には注意
- プロトン(X50、X70)は吉利のプラットフォームを活用しており、内装品質が数年前と比べて大幅向上。今回のGosfordシートが採用されるモデルにも注目
- 日本車(トヨタ・ホンダ)はまだ信頼性・リセールバリューで優位。駐在員が多い地域では依然人気が高い
- マレーシアで中古車や長期レンタカーを検討している方は、中国ブランド車の価格競争で日本車の中古相場が若干下がっている傾向があります。購入のタイミングとして悪くないかもしれません
写真: Charlie Suchart / Unsplash
出典: China Press の情報を元に、日本人在住者向けに独自作成した記事です。価格・条件は変更される場合があります。最新情報は公式サイトでご確認ください。


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