マレーシアで給与明細を見ると「EPF」や「KWSP」という控除項目が必ず登場します。これはマレーシア版の公的積立年金制度ですが、最近「14歳からKWSP口座を開設してi-Saraanに登録できる」「16歳から自由に積み立てられる」という制度が話題になっています。
「中学生から老後の備えを始める」——日本では考えられない話ですが、マレーシアではいま若者の金融リテラシー教育が本格化しています。
KWSPとは? ——日本の厚生年金との比較
KWSP(Kumpulan Wang Simpanan Pekerja)は英語でEPF(Employees’ Provident Fund)とも呼ばれる、マレーシアの強制積立年金です。日本の厚生年金と似た制度ですが、仕組みは大きく異なります。
| 項目 | マレーシア KWSP | 日本 厚生年金 |
|---|---|---|
| 積立方式 | 個人口座型(自分のお金が自分の口座へ) | 賦課方式(現役世代が高齢者を支える) |
| 受給開始 | 55歳以降に引き出し | 65歳以降に月額受給 |
| 会社拠出 | 給与の12〜13% | 給与の9.15% |
| 本人拠出 | 給与の11% | 給与の9.15% |
| 自営業者 | i-Saraanで任意加入 | 国民年金に強制加入 |
| 将来の不安 | 低い(自分の口座に積み上がる) | 高い(少子化で受給額が変動) |
日本の年金との最大の違いは「自分のお金が自分の口座に積み立てられる」点。少子化で将来の受給額が不透明な日本の年金とは対照的に、KWSPは積み立てた分が確実に戻ってくる構造です。
KWSPの3つの口座
積み立てたお金は3つの口座に振り分けられます。
| 口座 | 日本でいうと | 引き出し条件 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| Akaun Persaraan(年金口座) | 老齢年金 | 55歳以降 | 老後の生活資金 |
| Akaun Sejahtera(福祉口座) | 財形住宅貯蓄 | 住宅・教育・医療など | 住宅ローン返済、留学費用 |
| Akaun Fleksibel(柔軟口座) | 普通預金 | いつでも可 | 緊急時の生活費 |
2024年から導入されたAkaun Fleksibel(柔軟口座)は特に若い世代に人気で、日本のiDeCo(個人型確定拠出年金)にはない「いつでも引き出せる」機能が評価されています。
i-Saraanとは?——フリーランス・ギグワーカーの味方
i-Saraanは、会社員以外の自営業者・フリーランス・ギグワーカー向けのKWSP任意加入プログラムです。
GrabのドライバーやFoodpanda(フードパンダ)の配達員、個人事業主など、正規の雇用関係がない働き方をする人は通常KWSPの強制加入対象外。そこで政府がi-Saraanを設けて任意積立を後押ししています。
i-Saraanのメリット:
– 政府から年間最大RM300(約11,910円)のボーナスが上乗せされる
– KWSPの年間配当(例年4〜6%)が期待できる
– 積立額が所得税控除の対象になる
14歳から始める複利の魔法
今回の制度変更で14歳からKWSP口座開設・i-Saraan登録が可能になりました。これがどれほど有利か、月RM100の積立でシミュレーションしてみましょう(年利5%複利、55歳受取として試算)。
| 開始年齢 | 積立期間 | 55歳時の想定残高 | 日本円換算(1RM=39.7円) |
|---|---|---|---|
| 14歳 | 41年間 | 約RM161,000 | 約639万円 |
| 25歳 | 30年間 | 約RM83,000 | 約329万円 |
| 35歳 | 20年間 | 約RM41,000 | 約163万円 |
同じ月RM100でも、14歳から始めれば35歳からの約3.9倍の資産になります。日本のiDeCoは原則20歳以上が対象ですが、マレーシアは14歳から認めることで、複利効果を最大限に活かす設計になっています。
「老後の準備は一日でも早く始めるほどいい」——複利の力はマレーシアでも日本でも変わりません。
日本人が知っておくべきこと
就労ビザで働く日本人の場合:
マレーシアの会社員として働く場合、外国人でもKWSPへの任意加入が認められるケースがあります。帰国時には積み立てた残高を引き出すことが可能です。勤務先のHRに確認してみましょう。
お子さんがいる場合:
マレーシア国籍を持つお子さん、または将来マレーシアで働く可能性があるなら、14歳になったタイミングでKWSP口座を開設しておくことを検討する価値があります。
マレーシア人パートナーがいる場合:
パートナーが自営業やフリーランスであれば、i-Saraanへの加入を一緒に検討してみてください。政府のボーナス(年間最大RM300)を受け取りながら老後資金を積み立てられます。
手続き方法:
KWSP公式アプリ「i-Akaun」またはKWSP窓口(クアラルンプールはJalan Raja、各州の主要都市にも拠点あり)から登録できます。英語対応しているので言語の心配は不要です。
若いうちから将来を見据えた貯蓄を始めるマレーシアの文化——日本人も参考にしてみてはいかがでしょうか。
写真: Zulrashdi Awang / Unsplash
出典: Leesharing の情報を元に、日本人在住者向けに独自作成した記事です。価格・条件は変更される場合があります。最新情報は公式サイトでご確認ください。


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