マレーシアで、元控訴裁判所(Court of Appeal)判事のM・グナラン氏(69歳)が、マラヤ高等裁判所の弁護士(Advocate & Solicitor)として正式に復帰したことが話題となっています。退官から3年、ベテラン法曹人の「第二のキャリア」スタートに、マレーシアの法曹界が注目しています。
グナラン元判事のキャリアを振り返る
グナラン氏は1981年にマラヤ大学(Universiti Malaya)法学部を卒業後、司法・法務サービスに入職。約40年にわたる法曹人生で、以下のキャリアを歩みました。
| マレーシアの役職 | 日本でいうと |
|---|---|
| 治安判事(Magistrate) | 簡易裁判所の判事 |
| 地方裁判所判事(Sessions Court Judge) | 地方裁判所判事 |
| 高等裁判所判事(High Court Judge) | 地方・高等裁判所クラスの判事 |
| 控訴裁判所判事(Court of Appeal Judge) | 高等裁判所(控訴院)の判事 |
在任中に書いた判決文は200本以上。日本でいう「ベテランの論客裁判官」として、複雑な社会問題にも果敢に判決を下してきた人物です。
注目判決に見るマレーシアの社会課題
グナラン氏が手がけた判決は、多民族・多宗教国家マレーシアの縮図でもあります。
- 国民型学校(vernacular school)の合憲性:華語やタミル語で授業を行う学校を公教育として認めることが、マレーシア憲法に違反しないかを問う裁判。日本には存在しない多言語教育制度をめぐる問いです。
- Sister in Islam によるファトワ(宗教令)への異議申し立て:イスラム女性権利団体が、セランゴール州のイスラム法的見解に対して異議を唱えた事件。イスラム法と民事法が並存するマレーシア特有の問題です。
- 書籍「Gay is OK! A Christian Perspective」の禁止令をめぐる法的争い。
これらを見ると、マレーシアの法廷がいかに宗教・民族・社会価値観の交差点であるかがよくわかります。
マレーシアの裁判所制度(日本との比較)
マレーシアは英国統治時代の影響でコモンロー(Common Law)を採用しており、日本の大陸法(ドイツ・フランス由来)とは根本的に異なります。
| マレーシア | 日本 | |
|---|---|---|
| 最高審 | 連邦裁判所(Federal Court) | 最高裁判所 |
| 二審 | 控訴裁判所(Court of Appeal) | 高等裁判所 |
| 一審(上位) | 高等裁判所(High Court) | 地方裁判所 |
| 一審(下位) | 地方裁判所(Sessions Court)/ 治安裁判所(Magistrate Court) | 簡易裁判所 |
| 法体系 | コモンロー(判例法主義) | 大陸法(成文法主義) |
コモンローでは過去の判例が法的拘束力を持つため、200本以上の判決文を書いたグナラン氏のような人物は「生きた法律の図書館」ともいえる存在です。
「ヤメ判」はマレーシアにも存在する
日本では退職した裁判官が弁護士に転身することを俗に「ヤメ判(やめはん)」と呼びます。裁判所内部の慣行や法律の実務を熟知しているため、弁護士として高い評価を受けることが多く、企業法務や刑事弁護の現場でも重宝されます。
マレーシアでも同様のケースがあり、今回の入誓式(sworn-in ceremony)はアリス・ロック高等裁判所判事の面前で行われ、連邦弁護士(Federal Counsel)とマレーシア弁護士会(Malaysian Bar)からも異議なく承認されました。同じ式典では他に5名の弁護士も登録されており、グナラン氏はその中でも特に注目を集めた一人です。
なお、グナラン氏は引退した教員の妻シティラ・デヴィさんと3人の息子さん(弁護士1名・エンジニア2名)に恵まれた家庭人でもあります。
日本人が知っておくべきこと
マレーシアで生活していると、ビザトラブル、雇用契約の問題、不動産売買など、法律が絡む場面は意外と多くあります。
- マレーシアの弁護士(Advocate & Solicitor)は、日本の弁護士に相当します。手続きは主に英語で行われます。
- 日本語対応の弁護士は限られるため、まずは在マレーシア日本大使館(クアラルンプール)やJETROのサポートデスクへ相談するのが安心です。
- 弁護士を探す場合はマレーシア弁護士会(Malaysian Bar)の公式ウェブサイト(www.malaysianbar.org.my)で検索できます。
- グナラン氏のような元判事出身の弁護士は、特に複雑な訴訟案件で力を発揮します。費用は高めになりますが、その分の信頼性があります。
法律の専門家が「もう一度現場に戻りたい」と思えるほど活気あるマレーシアの法曹界——その背景には、急速に発展するマレーシア社会の複雑さがあるのかもしれません。
出典: Varnam の情報を元に、日本人在住者向けに独自作成した記事です。情報は変更される場合があります。最新情報は公式サイトでご確認ください。


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