マレーシア給与明細の控除項目、全部わかる?

マネー・生活費

マレーシアで働き始めて最初の給与明細(Payslip)を手にしたとき、「この項目って何が引かれているの?」と戸惑いませんでしたか?日本と似た項目もあれば、マレーシア独自の制度もあって、最初はなかなか理解しにくいですよね。

今回は、マレーシアの給与明細に登場する主な控除項目を、日本の制度と比較しながらわかりやすく解説します。在住者も、これから就職する方も、ぜひ手元の明細と照らし合わせながら読んでみてください。


マレーシアの主な控除項目まとめ

まず全体像を把握しましょう。マレーシアの給与明細には、主に以下の控除項目が登場します。

項目 略称 日本の相当制度
従業員積立基金 EPF / KWSP 厚生年金
社会保障機構 SOCSO / PERKESO 労災保険+傷病補償
雇用保険制度 EIS / SIP 雇用保険
月次税額控除 PCB / MTD 源泉徴収(所得税)
ザカット Zakat ―(ムスリムのみ)

日本と構造は似ていますが、中身はかなり異なります。一つひとつ見ていきましょう。


① EPF(従業員積立基金)― 日本の「厚生年金」にあたる制度

EPF(Employee Provident Fund / KWSP: Kumpulan Wang Simpanan Pekerja) は、マレーシア最大の強制積立制度です。日本の厚生年金に似ていますが、決定的な違いがあります。日本の厚生年金は「社会全体で支え合う賦課方式」ですが、EPFは自分専用の口座に積み立てる確定拠出型。つまり自分が積み立てた分がそのまま老後に戻ってくる仕組みです。

EPF 拠出率(2024年現行)

対象 月給RM5,000以下 月給RM5,000超
従業員 11%(9%選択可) 11%
雇用主 13% 12%

月給RM5,000(約200,500円)の場合、従業員負担はRM550(約22,055円)。これが毎月EPF口座に積み立てられます。

日本の厚生年金との比較

比較項目 EPF(マレーシア) 厚生年金(日本)
方式 確定拠出(個人口座) 賦課方式(社会保険)
従業員負担率 11% 約9.15%
雇用主負担率 12〜13% 約9.15%
合計拠出率 約23〜24% 約18.3%
老後の受給 口座残高を一括または分割受け取り 毎月年金として受給
途中引き出し 住宅・医療等で一部可能 原則不可

日本人駐在員や就労ビザ保有者は、EPF加入が任意となるケースもあります。長期在住の方は任意加入を真剣に検討する価値があります。


② SOCSO(社会保障機構)― 労災・障害保険

SOCSO(Social Security Organisation / PERKESO) は、業務中の事故や職業病で働けなくなった場合の補償制度です。日本の労災保険と傷病補償に相当します。

SOCSO 拠出率

対象 拠出率 月給RM4,000の場合
従業員 0.5% RM20(約802円)
雇用主 1.75% RM70(約2,807円)

保険対象となる賃金には上限があり、月給RM5,000を超える部分はSOCSOの計算対象外です。従業員負担はわずかですが、万一の事故時に給付を受けられる重要な保険です。


③ EIS(雇用保険制度)― リストラ時の生活補償

EIS(Employment Insurance System / SIP: Sistem Insurans Pekerjaan) は、2018年に導入された比較的新しい制度で、日本の雇用保険に相当します。リストラや会社都合による解雇の場合、最大6ヶ月間の手当が支給されます。

EIS 拠出率

対象 拠出率 月給RM3,000の場合
従業員 0.2% RM6(約241円)
雇用主 0.2% RM6(約241円)

月に240円ほどの負担でリストラ保険に加入できるのは、費用対効果が高いと言えるでしょう。


④ PCB / MTD(月次税額控除)― 日本の源泉徴収

PCB(Potongan Cukai Berjadual) または MTD(Monthly Tax Deduction) は、日本の「源泉徴収」そのものです。毎月の給与から所得税の前払い分が天引きされる仕組みです。

マレーシアの所得税は累進課税で、年収RM5,000以下は非課税。年収が上がるほど税率も上がります。控除額は年初に提出する TP1フォーム(日本の「給与所得者の扶養控除等申告書」に相当)の内容によって変わるため、医療費や保険料などの控除を申告しておくと手取りが増えます。

日本と同様、年末に確定申告(BE Form)を提出すれば、払いすぎた税金の還付を受けられます。


⑤ ザカット(Zakat)― ムスリム従業員のみ

ムスリム従業員の場合、宗教上の義務として所得の2.5% をザカット(Zakat)として拠出することがあります。ザカットを支払うと、その金額を所得税から控除できる仕組みになっているため、実質的な負担は二重になりません。非ムスリムには一切関係ない項目です。


給与から「勝手に引いてはいけない」項目

マレーシアの雇用法(Employment Act 1955)では、雇用主が従業員の同意なく控除できない項目が定められています。

雇用主が勝手に引けない費用 理由
制服・ユニフォーム代 業務必要経費は雇用主負担が原則
業務中の機材破損費用 事前書面合意がない限り不可
研修・教育費 事前の書面合意が必要

明細に身に覚えのない控除があった場合は、まずHRへ確認を。それでも解決しない場合は 労働局(Jabatan Tenaga Kerja / JTK) に相談できます。


日本人が知っておくべきこと

外国人とEPFの関係
マレーシアで就労ビザで勤務する外国人は、EPFへの加入が任意の場合があります。加入しなければ手取りは増えますが、老後のための積立もゼロ。長期在住を考えているなら任意加入が断然おすすめです。

TP1フォームを必ず提出しよう
年初にHRへ提出するTP1フォームで各種控除(医療費、生命保険、SSPN教育積立等)を申告すれば、毎月のPCB控除額が減り、手取りが増えます。日本の年末調整に相当する大切な手続きです。

給与明細チェックの3ポイント
1. EPF控除: 月給の11%が引かれているか
2. 手取り額(Net Pay) = 総支給額(Gross Pay)- 全控除額 になっているか
3. PCB金額: TP1を提出していない場合は最高税率で計算されることも


マレーシアの社会保障制度は、日本に比べると仕組みがシンプルで理解しやすい面もあります。各項目の意味がわかると、毎月の明細の数字がすっと腹落ちするはずです。ぜひ今月の給与明細を手に取って、実際の金額と照らし合わせてみてください!

出典: Leesharing の情報を元に、日本人在住者向けに独自作成した記事です。拠出率・制度内容は変更される場合があります。最新情報はEPF(KWSP)・SOCSO・内国歳入庁(LHDN)の公式サイトでご確認ください。

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