ビールを飲むことが、森を守ることにつながる——そんな取り組みが、マレーシアで始まっています。
デンマーク発の世界的ビールブランド、カールスバーグ(Carlsberg)のマレーシア法人が2026年5月22日、マレーシア森林基金(Malaysia Forest Foundation / MFF)と連携し、森林生態系の保護に60万リンギット(約2,406万円、2026年5月29日時点 1RM≈40.1円)を投資すると発表しました。発表の場は、国際生物多様性デーに合わせてデンマーク大使公邸で開催された式典。華やかなセレモニーの裏には、企業がどこまで「本気」で自然と向き合うかという問いがあります。
なぜビール会社が森を?——ESG時代の企業責任
カールスバーグはいま、「Brewing Tomorrow(酿造未来/未来を醸す)」という名のESG戦略を推進しています。
ESGとは、Environmental(環境)・Social(社会)・Governance(ガバナンス)の略で、企業が利益だけでなく環境や社会への貢献を重視する経営姿勢のこと。日本でもトヨタやソニーが積極的に取り組んでいますが、マレーシアの大手企業でもここ数年で急速に広がっています。
カールスバーグが掲げる4つのESG柱はこちらです。
| ESG柱 | 内容 | 日本企業の類似例 |
|---|---|---|
| 炭素削減 | 製造工程での CO₂排出削減 | トヨタのカーボンニュートラル宣言 |
| 自然保護 | 森林・生態系の保全(今回の取り組み) | サントリーの「水と生きる」森林保全 |
| 社員の力を引き出す | 多様性のある職場づくり | パナソニックのD&I推進 |
| 選択を導く | 消費者が持続可能な選択をしやすい環境整備 | キリンのアルコール低減商品展開 |
マレーシア森林基金(MFF)とは?
MFFは、マレーシア全土の環境NGOが取り組む森林保全プロジェクトを資金面で支援する基金です。日本でいえば「緑の募金」を企業向けに大規模化したようなイメージ、と考えると分かりやすいでしょうか。
カールスバーグからの資金は、以下の3つの目的に使われます。
| 保護対象 | 役割 | 日本への影響(もし失われたら) |
|---|---|---|
| 炭素貯留林 | CO₂を大量に吸収・固定し、気候変動を抑制 | 地球全体の温暖化が加速 |
| 水源涵養地域 | クアラルンプールなど都市部への安定した水供給を担う | 水不足、洪水リスク増大 |
| 地域固有の生物多様性 | オランウータン・タパンなど希少種の生息環境を守る | 東南アジアの固有種が絶滅 |
マレーシアは世界でも有数の生物多様性を誇る国です。ボルネオ島にはオランウータンやボルネオゾウが生息し、半島部もタパン(マレーバク)などの希少動物の宝庫。日本の本州(面積約22万km²)より広い熱帯雨林が広がっています。
ところが近年、パーム油農園の拡大や都市開発による森林破壊が深刻化しています。マレーシア政府は国土の50%を永久林として維持する方針を掲げていますが、民間企業の参加なくして実現は難しいのが現状です。
グリーン・トランスフォーメーション・アライアンス(GTA)とは
カールスバーグはさらに、グリーン・トランスフォーメーション・アライアンス(GTA)の創立メンバーとしても名を連ねています。GTAは、マレーシア企業が連携してグリーン経済への移行を進めるための業界横断プラットフォームです。
日本では経団連の「カーボンニュートラル行動計画」に近い位置づけといえるでしょう。ただしGTAは業種の垣根を越えた横断型で、飲料・製造・金融など異業種企業が一堂に会して「どうすれば環境負荷を下げられるか」を議論します。
| 項目 | 日本 | マレーシア |
|---|---|---|
| 主な環境問題 | 里山の荒廃、花粉症、温暖化、海洋プラ汚染 | 熱帯雨林の減少、野生動物の生息地消失、水質汚染 |
| 企業の連携体 | 経団連カーボンニュートラル行動計画 | グリーン・トランスフォーメーション・アライアンス(GTA) |
| 法的枠組み | 地球温暖化対策推進法、パリ協定国内措置 | 国家生物多様性計画、REDD+参加 |
| 消費者の関心度 | 比較的高い(エコバッグ普及率など) | 急速に高まりつつある(若年層中心) |
日本人が知っておくべきこと
「カールスバーグのビールを買えば森が守られる」わけではありません(直接的な寄付型商品ではないため)。しかし、こうした企業のESG活動は消費者の支持なくして継続できません。
マレーシアに住んでいると、コールドストレージ(Cold Storage)やジャヤグローサー(Jaya Grocer)でよく見かけるカールスバーグ。その企業がマレーシアの森林保護に2400万円以上を投じているというのは、知っておいて損のない話です。
もし環境保護に関心があれば、以下のような行動も選択肢のひとつです:
- マレーシア森林基金(MFF)への個人寄付:英語・マレー語で寄付受付中
- WWFマレーシアの会員になる:月額RM30(約1,203円)から熱帯雨林保護を支援できる
- PERHILITAN(野生動物保護局)のボランティア:日本人でも参加可能なプログラムあり
酷暑のマレーシアで冷えたビールを飲むとき、その背後で動く「緑のお金」の流れを想像してみるのも、在住の日本人として面白い視点ではないでしょうか。
写真: Joshua Kettle / Unsplash
出典: China Press の情報を元に、日本人在住者向けに独自作成した記事です。価格・条件は変更される場合があります。最新情報は公式サイトでご確認ください。


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