マレーシアで「BAT」の略称で知られる英米たばこ(British American Tobacco Malaysia、株式コード:4162)が、2026年第2四半期(4〜6月期)の決算を発表しました。その内容は衝撃的でした——純利益が前年同期比79%減のRM1,064万(約4億2,560万円)にまで激減したのです。
在マレーシアの日本人にはあまり馴染みがないかもしれませんが、日本でいえばJT(日本たばこ産業)のマレーシア版と考えるとイメージしやすいでしょう。マレーシア証券取引所(Bursa Malaysia)に上場し、長年にわたって安定配当を出してきた伝統的なブルーチップ銘柄です。
急落の根本原因:黒市たばこという「見えない敵」
今回の業績悪化の背景には、BATが長年直面してきた構造的な問題があります。それが黒市(ブラックマーケット)たばこの蔓延です。
2026年第2四半期時点で、マレーシアのたばこ市場全体の56.2%が違法な黒市品で占められています。これは日本では想像しにくい規模感です。日本にも「偽造たばこ」は存在しますが、市場の過半数を占めるような事態にはなっていません。
なぜ黒市たばこがこれほど多いのか?
マレーシアのたばこ税は非常に高く設定されており、正規品1箱はRM21〜26(約840〜1,040円)程度。一方、ブランドマークのない違法品は1箱RM5〜8(約200〜320円)で流通しています。消費者が経済的理由から違法品に流れるのは、残念ながら「合理的な選択」になってしまっています。
日本でいえば、コンビニで600円のたばこが「裏ルート」では100円台で買えるような状況——そんな歪んだ市場がマレーシアでは常態化しているのです。
業績一覧:どれだけ深刻か
| 指標 | 2026年(今期) | 2025年(前年) | 増減 |
|---|---|---|---|
| Q2純利益 | RM1,064万(約4億2,560万円) | RM約5,050万 | ▼79% |
| Q2売上高 | RM5億1,529万(約206億円) | RM約6億2,460万 | ▼17.5% |
| 上半期純損益 | ▲RM2,451万(赤字) | +RM7,422万(黒字) | 大幅悪化 |
| 上半期売上高 | RM6億7,559万(約270億円) | RM約9億4,650万 | ▼28.6% |
※1RM = 40円(2026年7月30日時点)。前年数値は増減率から逆算した概算値。
上半期ベースでみると、黒字から約9億8,040万円の赤字に転落。その規模感は決して小さくありません。
配当金も大幅カット:高配当株として買っていた投資家への影響
BATマレーシアは長年、高配当株として日本人投資家にも注目されてきました。しかし今回、配当金が1株12セン→5センと58%超の大幅削減となることが発表されました。
| 2025年Q2 | 2026年Q2 | |
|---|---|---|
| 配当金(1株あたり) | 12セン(約4.8円相当) | 5セン(約2円相当) |
| 権利落ち日 | — | 2026年8月28日 |
| 支払日 | — | 2026年9月28日 |
日本でいえば、JTが突然配当を6割カットしたようなインパクトといえるでしょう。高配当目当てで保有していた投資家には痛い知らせです。
RTM(新販売チャネルモデル)とは何か
BATは現在、「RTM(Revised Trade Model=改訂取引モデル)」と呼ばれる販売流通の抜本的な見直しを進めています。日本でいえば、メーカーが問屋を介さず小売店に直接販売する「直販体制」への移行に近いイメージです。中間マージンを削減し、長期的にはコスト効率を高める狙いがあります。
ただし移行期間中は営業コストが一時的に膨らみ、今期の運営費は前四半期比19.3%増となりました。これが純利益を直撃した形です。
RTMが軌道に乗れば業績回復が期待されますが、黒市問題という構造的な逆風が続く限り、本格回復への道は険しい状況です。
日本人が知っておくべきこと
マレーシア株投資に興味がある方へ:
– BATマレーシア(4162)は高配当株として知られてきたが、今後の配当水準の回復は不透明
– 黒市たばこ問題は政府が取り締まりを強化しているが、市場構造の問題で短期解決は難しい
– 来期(7〜9月)のRTM移行効果が本格的な業績回復の試金石になる
マレーシアに住んでいる方へ:
– 路上や非正規ルートで販売されている「明らかに安いたばこ」は黒市品の可能性が高い
– 正規品には税務局(LHDN)のホログラムシールが貼られている
– 違法たばこの購入・所持・販売は法律で処罰の対象になる
– AEONやLotus’s、コンビニなどの正規小売店で購入するのが安全
出典: China Press の情報を元に、日本人在住者向けに独自作成した記事です。価格・条件は変更される場合があります。最新情報は公式サイトでご確認ください。


コメント