フィリピン政府がマレーシア製ブロックチェーンを採用

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マレーシア発のブロックチェーン技術が、東南アジアで静かな革命を起こしています。マレーシアに拠点を置くZetrix AIが、フィリピン政府と国家ブロックチェーン基盤の構築に関する覚書(MOU)を締結したと、2026年7月7日にクアラルンプールで発表しました。「ブロックチェーン」と聞くと暗号資産(仮想通貨)を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、今回の取り組みはそれとは全く異なります。

Zetrixとは?——日本のマイナンバーに似た「国家デジタル身分証」の基盤

Zetrixとは、マレーシア政府のIT研究機関MIMOS(マレーシアマイクロエレクトロニクス研究所)が関わるブロックチェーン基盤です。簡単に言えば、デジタル上で「本人確認」を安全・確実に行う国家規模のインフラです。

日本では2016年に「マイナンバー制度」が導入され、税務・社会保険などの行政手続きを効率化するための個人識別番号が普及しました。ただし、日本のシステムは中央集権型(政府のサーバーで一元管理)であるのに対し、Zetrixはブロックチェーン技術を使った分散型です。改ざんが極めて困難で、複数の国・機関をまたいでデータを共有できる点が大きな違いです。

比較項目 日本(マイナンバー) Zetrix(マレーシア発)
技術方式 中央集権型データベース ブロックチェーン(分散型)
主な用途 税務・社会保険・行政手続き デジタル身元証明・行政資格発行・貿易促進
国境をまたぐ利用 限定的 ASEAN全域での相互利用を想定
管理主体 日本政府(デジタル庁) 各国政府 + MIMOS + Zetrix AI

フィリピンとの協定——何が変わるのか

今回の覚書で合意した第一フェーズの取り組みは、主に3つの分野に集中します。

  1. 越境デジタル本人確認:フィリピン人がマレーシアで働く際や、逆のケースで、ビザや身元確認の手続きをデジタルで完結できるようになります。
  2. 政府資格のデジタル発行・審査:卒業証書、専門資格証、政府発行の証明書などをブロックチェーン上に記録し、偽造を防止します。
  3. 貿易促進:ASEAN域内の商取引における書類手続きのデジタル化・効率化。

今回の協定に関わる機関は以下の通りです。

機関名 役割
Zetrix Philippines フィリピン現地法人として実装を主導
MIMOS(マレーシア) 国立研究機関としてブロックチェーン基盤を提供
My Blockchain Infrastructure (MBI) マレーシアの国家ブロックチェーン基盤(先行事例)
フィリピンICT省(DICT) 政府側の窓口・政策実施

これが「第2の国家案件」——マレーシアが先行事例として機能

Zetrix AIにとってフィリピンは2番目の国家レベルブロックチェーン案件です。第1号はマレーシア自身のMBI(My Blockchain Infrastructure)でした。「自国で実証してから他国に展開する」という堅実な戦略を取っている点が、信頼性の高さにつながっています。

さらにZetrix AIは中国の「スパークチェーンネットワーク」の国際スーパーノード設計も手がけており、すでに世界人口の約20%に相当する規模のデジタル身元確認を提供できる体制を持っています。一国家の基盤ではなく、グローバルな分散インフラを志向している点が、他の類似サービスとの大きな違いです。

なぜフィリピンなのか——10年の実績という強み

フィリピンとマレーシアは隣国でありながら、労働力の往来が特に活発なASEANの重要な二国間関係を持ちます。マレーシア国内のフィリピン人労働者は数十万人規模とも言われ、越境手続きの効率化は実生活に直結する課題です。

Zetrix AIがフィリピンで10年間にわたるデジタル政府サービスの運営実績を持つことも、今回の協定実現の背景にあります。「なんとなく信頼された」のではなく、10年の地道な実績に裏打ちされた採用です。日本でいえば、長年の官民連携プロジェクトを経てようやく採用されるNTTデータやNECのポジションに近いイメージです。

日本人が知っておくべきこと

マレーシアに在住する日本人、またはASEAN域内でビジネスを行う日本企業にとって、この動向は何を意味するのでしょうか?

  • マレーシアはフィンテック・デジタル政府分野でASEANをリードしつつある:観光地やグルメだけでなく、技術輸出国としてのマレーシアという側面が急速に強まっています。
  • 越境手続きのデジタル化が進む:将来的には就労ビザ申請や専門資格認証などで、書類の郵送や窓口往訪が不要になる可能性があります。在住外国人にとっても大きなメリットです。
  • MIMOSは1985年設立の国立研究機関:「マレーシア製=品質が不安」という先入観は禁物です。MIMOSは政府直轄の技術機関であり、その関与は信頼性の証です。
  • Bursa Malaysia(マレーシア証券取引所)上場企業との関わりもある:ASEAN展開に伴い、関連銘柄への投資家注目度が高まっています。在マレーシア駐在のビジネスパーソンなら把握しておく価値があるトレンドです。

マレーシアが静かに、しかし着実にASEANのデジタルインフラを支える存在になりつつあります。「屋台の国」「多民族の国」というイメージだけでなく、テクノロジー外交を展開する新しいマレーシアの姿にこれからも注目です。

写真: Esmonde Yong / Unsplash

出典: China Press の情報を元に、日本人在住者向けに独自作成した記事です。価格・条件は変更される場合があります。最新情報は公式サイトでご確認ください。

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