マレーシアの街中を走る車が、静かに変わりつつあります。GWM(長城汽車)、MG(上汽名爵)、XPENG(小鵬汽車)——クアラルンプールの幹線道路やショッピングモールの駐車場で、中国系ブランドの新車を見かける機会が急増していませんか?
その「中国車ブーム」が、マレーシアの自動車部品メーカーに劇的な恩恵をもたらしています。2026年第2四半期(4〜6月)の決算で、EP Manufacturing Berhad(以下EPMB、株価コード:7773)が発表した数字は、業界関係者を驚かせるものでした。
純利益が1年で18倍——数字が示す「転換点」
EPMBの2026年Q2決算を前年同期と比べると、その変化の大きさは一目瞭然です。
| 指標 | Q2 2025 | Q2 2026 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | RM 1億2,770万(約50億円) | RM 2億1,268万(約84億円) | +67% |
| 純利益 | RM 28万(約1,100万円) | RM 515万(約2億円) | +1,739%(約18倍) |
※1RM=39.5円(2026年8月27日時点)
売上高が67%増でも、純利益が18倍——この「ギャップ」が今回のポイントです。答えは「操業レバレッジ」にあります。工場の固定費(建物・設備のコスト)は生産量が少ないうちは重荷ですが、量が増えるほど1台あたりのコストが急激に下がる。日本でいえば、トヨタが「世界一の生産量」で圧倒的なコスト競争力を維持してきた——その同じ原理がここでも働いています。
EPMBとは?——マレーシア自動車産業の「縁の下の力持ち」
日本人には馴染みが薄いEPMBですが、マレーシアの自動車産業では重要なポジションを占めています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | EP Manufacturing Berhad |
| 設立 | 1993年 |
| 上場市場 | バーサ・マレーシア(Bursa Malaysia) |
| 株価コード | 7773 |
| 主な事業 | 自動車部品製造・車両シーティング・車両塗装 |
| 主要取引先 | Proton、Perodua、GWM、SAIC-MG、XPENG |
Proton(プロトン)とPerodua(プロドゥア)はマレーシアの国民車ブランドです。日本でいえばトヨタや日産に相当する「誰もが知っている地元ブランド」。EPMBはその部品を長年供給してきた「縁の下の力持ち」的なメーカーでした。
中国3メーカーの月産1,000台超えが転換点
今回の業績急伸の直接の引き金は、GWM・SAIC-MG・XPENG向けの月間生産台数が1,000台を超えたことです。2026年Q2(4〜6月)に達成したこの節目は、工場の稼働率が一気に採算ラインを超えたことを意味します。
さらに2026年6月には、マラッカ(Malacca)州に新設した車両塗装工場が本格稼働を開始。単なる部品サプライヤーから、完成車に近い「車体仕上げ」まで手がける企業へと進化しました。
なぜ中国メーカーはマレーシアで生産するのか
中国メーカーがマレーシアでのCKD(現地組み立て)生産を急拡大している背景には、明確な理由があります。
- ASEAN関税メリット: ASEAN域内では自動車関税が大幅に優遇される
- マレーシアの開放的な投資政策: 外資100%出資が認められている
- インフラ整備の進んだ工業団地: ペナン・セランゴール・マラッカに集積
日本でいえば、かつてホンダやトヨタが「タイやインドネシアに現地工場を建てて、ASEAN全体へ供給する」戦略を取ったのと同じ構図です。今、その役を中国メーカーが演じています。
今後の成長戦略——国内から世界へ
EPMBの展開はさらに続きます。
- Proton・Perodua新モデルへの部品供給契約を確保:国民車2ブランドとの関係を強化
- 自動車シーティング事業の拡大:付加価値の高い分野へのシフト
- ASEANおよび国際市場への輸出拡大:マレーシアをハブとした域外展開を計画中
日本人向けメモ——この「中国車ブーム」をどう読むか
マレーシアで生活している方なら、すでに街の変化を実感しているはずです。
日常で感じられる変化:
– GWM Haval、MG4、XPENG G6などが路上で急増
– ショッピングモールの駐車場にEV充電スポットが続々と設置
– 新車ディーラーに中国語・英語対応スタッフが増加
投資・ビジネス視点:
EPMBはバーサ・マレーシア上場企業であり、CDS口座(現地証券口座)を持つ外国人も売買可能です。ただし中小型株であり、日本市場と比べて流動性や情報開示の頻度が異なります。投資判断は必ず自己責任で行ってください。
マレーシア経済を読む視点:
今回の一企業の業績は、より大きなトレンドの一断面です。日本の自動車メーカー(トヨタ、ホンダ、三菱)が長年培ってきたASEAN市場での地位を、中国勢がどのように塗り替えようとしているか——マレーシアに住む日本人として、その最前線を肌で感じられる立場にあります。
出典: China Press の情報を元に、日本人在住者向けに独自作成した記事です。価格・条件は変更される場合があります。最新情報は公式サイトでご確認ください。


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