売上の9割を1社に依存——そんなリスクを抱えながらも、静かに巨額投資を決断したマレーシアのアルミニウムメーカーが注目を集めています。
パクスレコとはどんな会社?
パクスレコ(Paxresco、証券コード:PA/7225)は、セランゴール州クアラ・スランゴールに拠点を構えるアルミニウム押し出し(エクストルージョン)加工メーカーです。現在、売上の約90%を米国の太陽光パネル大手 First Solar(ファースト・ソーラー) 向けのアルミフレーム部材が占めています。
日本でいえば、トヨタ系列のサプライヤーが売上のほぼ全てをトヨタ1社に依存しているような状態——それがパクスレコの現在地です。
1億リンギット(約40億円)の大型投資
2026年7月、パクスレコはRM1億(約39億9,000万円、1RM=39.9円・2026年7月14日時点)の設備投資計画を発表しました。
| 項目 | 内容 | 日本円換算 |
|---|---|---|
| 投資総額 | RM1億 | 約40億円 |
| 工場場所 | クアラ・スランゴール(敷地18エーカー) | — |
| 現在の月産能力 | 3,500トン | — |
| 拡張後の月産能力 | 8,500トン(約2.4倍) | — |
| 完成予定 | 2027年下半期 | — |
月産能力を3,500トンから8,500トンへと約2.4倍に引き上げる計画。マレーシアの製造業では近年、太陽光・EV関連の部材需要が高まっており、この拡張投資はその波を見据えたものです。
「脱・First Solar依存」への段階的戦略
パクスレコが大型投資と同時に進めているのが、収益源の多元化です。
| フェーズ | First Solar依存度 | 時期 |
|---|---|---|
| 現在 | 約90% | 2026年 |
| 短期目標 | 70%以下 | 3年以内 |
| 長期目標 | 50%以下 | 中長期 |
この目標を達成するため、二つの新規事業に着手しています。
① アルミニウム窓サッシ事業
中国ブランド「MEVO」とパートナーシップを結び、建設業界向けのアルミ窓システムの製造・販売に参入。マレーシアは現在、首都圏を中心にコンドミニアム・商業施設の建設需要が旺盛で、国内消費を取り込む狙いがあります。
② パームオイル収穫用ポール
アルミニウムとカーボンファイバー製のパームオイル収穫用ポール(ヤシの実を高所から叩き落とす農具)を製造。マレーシアの基幹産業であるパームオイル農業向けの農業資材市場への参入です。
日本でいえば、自動車部品メーカーが「脱・自動車依存」を掲げて住宅設備や農業機械に進出するような動き、といえばイメージしやすいでしょうか。
直近の業績は厳しい局面
好材料の一方、直近の業績は試練が続いています。
| 指標 | 数値 | 日本円換算 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 2025年度通期純利益 | RM2,800万 | 約11億2,000万円 | -31.2% |
| 2026年度前9か月純利益 | RM1,303万 | 約5億2,000万円 | -40.8% |
| 現金保有額(2026年3月末) | RM4,408万 | 約17億6,000万円 | — |
| 負債額 | RM2,774万 | 約11億1,000万円 | — |
利益は2期連続で大幅減少していますが、現金保有(RM4,408万)が負債(RM2,774万)を上回っており、財務的には一定の体力を維持しています。
世界5社だけが持つ「ゼロ関税」認定
パクスレコが持つ大きな強みが、米国商務省からのアンチダンピング税ゼロ認定です。これは世界でわずか5社しか持たない認定で、アルミニウム押し出し製品を米国へ関税ゼロで輸出できることを意味します。
米中貿易摩擦によってアルミニウム関税が世界的に問題となる中、この認定はパクスレコにとって大きな競争優位です。日本の製造業でいえば、WTO認定の優遇関税枠を持つ工場のような立ち位置です。
日本人が知っておくべきこと
配当利回り6.3%の魅力
株価が低迷する中でも、パクスレコは安定配当維持を明言しています。現在の配当利回りは6.3%。日本の銀行預金(0.1〜0.2%)や平均的な株式(2〜3%)と比べると、かなり高い水準です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 証券コード | PA / 7225(ブルサ・マレーシア上場) |
| 株価(2026年7月時点) | 16セン(約6.4円) |
| 年間株価変動 | -13.9% |
| 配当利回り | 6.3% |
投資を検討する際の注意点
- 売上集中リスク: 依然としてFirst Solar依存度90%。同社の需要変動がパクスレコ業績に直撃する
- 新規事業の不確実性: アルミ窓サッシ・農業用ポールともに立ち上げ段階
- 収益回復には時間: 工場完成が2027年下半期のため、本格的な貢献は2028年以降の見通し
巨額投資の真価が問われるのは2027〜2028年頃。マレーシアの中小型製造業株に興味がある方には、長期視点でウォッチリストに加えておく価値のある銘柄かもしれません。
写真: Job Savelsberg / Unsplash
出典: China Press の情報を元に、日本人在住者向けに独自作成した記事です。価格・条件は変更される場合があります。最新情報は公式サイトでご確認ください。


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