「金は安全資産」と信じて保有していたのに、最近の急落に驚いた方も多いのではないでしょうか。実は今回の金価格下落、背後には意外な「売り手」がいました。その正体はトルコの中央銀行です。
2週間で60トン——トルコが売った金の量
2026年3月13日から27日の2週間で、トルコは推定約60トンの金を市場に放出しました。金額にするとおよそ80億ドル(約3兆2,000億円)。この規模感、少し想像しにくいですよね。
日本の感覚で例えると、東京五輪で使われた金メダルの金含有量は約6グラム。60トンは、その1,000万枚分に相当します。
| 週 | 売却量 | 備考 |
|---|---|---|
| 3月13日の週 | 約6トン | イラン情勢緊迫化直後 |
| 3月20日の週 | 約52.4トン | 大規模売却が本格化 |
| 合計 | 約58.4トン | USD 80億(約3.2兆円)相当 |
なぜトルコは金を売ったのか?
トルコは「金を売りたかった」わけではありません。背景にあるのは通貨防衛です。
イラン情勢の悪化でエネルギー輸入コストが急騰。ドル需要が高まる中、自国通貨リラの価値を守るために外貨が必要になりました。そこで保有する金を担保にドルを調達する「スワップ取引」を活用し、外貨準備を補ったのです。
これは日本でいえば、円安を食い止めるために財務省が外貨準備を使って「ドル売り・円買い介入」を行うのに近い発想です。ただし日本が主にドル資産を使うのに対し、トルコは金を使ったという点が特徴的です。
トルコが金を大量保有していた理由
トルコは過去10年間、世界でも有数の金の買い手国でした。その目的は「ドル依存からの脱却」。米ドル建て資産への集中リスクを分散するため、金を積み上げてきたのです。その蓄積が、今回の有事に「使える資産」として機能したわけです。
金価格への影響——ETFの売りも重なった
トルコの売却と同じ2週間で、金ETF(上場投資信託)からも43トンの資金が流出しました。トルコ分(58.4トン)と合わせると、短期間に100トン超の売り圧力が市場にかかったことになります。
| 売り手 | 売却量 | 概算金額 |
|---|---|---|
| トルコ中央銀行 | 約58.4トン | 約USD 80億(約3.2兆円) |
| 金ETF(世界全体) | 約43トン | 約USD 59億(約2.4兆円) |
| 合計 | 約101.4トン | 約USD 139億(約5.6兆円) |
結果として金価格はイラン戦争勃発前の水準から10%以上下落。執筆時点のスポット価格は1オンスあたりUSD 4,428(約177万円 / RM17,770)となっています。
現在の金価格(参考)
| 単位 | USD | RM | 日本円 |
|---|---|---|---|
| 1オンス(約31.1g) | 4,428 | 17,770 | 約177,000円 |
| 1グラム | 142 | 571 | 約5,700円 |
※ 1RM = 40.0円(2026年3月27日時点)
日本人向けメモ
マレーシア在住者にとっての金投資
マレーシアでは金投資が身近です。銀行の「ゴールドアカウント(Gold Investment Account)」や、Public Bankなど主要銀行で少額から積み立てられる仕組みが整っています。PawnショップチェーンのAr-Rahnu(アー・ラーヌ)ではイスラム方式の金保管サービスも人気です。
今回の急落を「買い場」と見るか「下落トレンドの始まり」と見るかは判断が分かれますが、地政学リスクが続く局面では金の売り圧力も続く可能性があります。
注意点
– マレーシアの銀行ゴールドアカウントはRM建てのため、為替変動(RMとUSDの関係)も考慮が必要
– 金の売買手数料(スプレッド)は銀行によって異なります
– 投資判断は必ずご自身の責任で行ってください
今回の件は「国家レベルの売却がいかに市場を動かすか」を示す好例です。金を資産の一部として持っている方は、中央銀行の動向も定期的にチェックしておくと良いでしょう。
写真: Infrarate.com / Unsplash
出典: China Press の情報を元に、日本人在住者向けに独自作成した記事です。価格・条件は変更される場合があります。最新情報は公式サイトでご確認ください。


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