マレーシアのスーパーや市場で豚肉を買うとき、「最近少し安くなったかも?」と感じたことはありませんか?実はいま、中国の豚肉市場で異例の「冬の時代」が続いており、その波紋がマレーシアの食品流通や華人コミュニティにも静かに広がっています。
中国産豚肉が10年ぶりの歴史的安値に
2026年3月末時点で、中国の豚(外三元生猪)の市場価格は1キログラムあたり約9.33元(約RM5.40/約214円)にまで下落しました。年初からの下落幅は実に24%で、直近10年間の最安値圏に突入しています。
日本のスーパーでは国産豚肉が1キロ700〜900円台であることを考えると、中国の市場価格がいかに低水準かがよくわかります。
現状の価格を比較してみると
| 指標 | 数値(RM) | 日本円換算(1RM=39.6円) |
|---|---|---|
| 中国豚の市場価格(1kg) | RM5.40 | 約214円 |
| 大手企業の平均生産コスト(1kg) | RM7.00 | 約277円 |
| 1kgあたりの赤字幅 | -RM1.60 | 約-63円 |
| 自繁自養(1頭あたり損失) | -RM200 | 約-7,920円 |
| 外購仔猪育肥(1頭あたり損失) | -RM291超 | 約-11,524円超 |
つまり、豚を育てれば育てるほど赤字という「逆ザヤ」の状態。まるで日本のコメ農家が「作れば作るほど損をする」と言われた時代に重なります。
なぜここまで下がったのか?
供給過剰という構造問題
2018〜2019年にかけて中国ではアフリカ豚コレラ(ASF)が猛威を振るい、豚の頭数が激減しました。その後、政府主導で飼育規模の回復・拡大が急ピッチで進んだ結果、今度は供給が需要をはるかに上回る状況になっています。
大手企業も例外ではありません。中国最大の豚生産企業「牧原股份(ムーユエン)」など上場各社は2026年第1四半期に揃って業績悪化を報告。「頭数は増やせたが価格が崩れた」という量増価下の局面が続いています。
マレーシアの豚肉市場への影響は?
中国の価格下落がマレーシアのスーパーの棚に即座に反映されるわけではありませんが、影響のルートはいくつかあります。
- 加工品の輸入増加:ソーセージ・缶詰・チャーシュー系加工品などは中国産が価格競争力を持ちやすくなる
- 地場豚農家への圧力:マレーシア国内の豚農家が安価な中国産加工品との間接競合にさらされる
- 小売価格への緩やかな下押し:直接輸入ではなくても、市場全体のセンチメントとして反映される可能性がある
マレーシアの豚肉の目安価格(参考)
| 品目 | 目安価格(RM) | 日本円換算 |
|---|---|---|
| 豚ロース(1kg) | RM22〜28 | 約871〜1,109円 |
| 豚バラ(1kg) | RM18〜24 | 約713〜950円 |
| 豚ひき肉(1kg) | RM15〜20 | 約594〜792円 |
| チャーシュー(100g) | RM6〜10 | 約238〜396円 |
マレーシアの華人社会にとっての豚肉とは
華人(中国系マレーシア人)コミュニティにとって、豚肉は単なるタンパク源ではありません。祝い事・祭事・日常の食卓に深く根付いた「文化的な食材」です。
- バクテー(肉骨茶):豚肉をスパイスで煮込んだ薬膳スープ。朝食の定番で、日本でいうお雑煮のような存在感
- 叉焼(チャーシュー):コピティアム(マレーシア式喫茶店)のご飯の供として欠かせない
- 豚の丸焼き(烤乳猪):結婚式や年中行事に登場する伝統料理。日本でいえばお正月のおせちに相当
旧正月の年菜(ニェンツァイ)をはじめ、豚肉は「繁栄・豊かさ」の象徴でもあります。中国の豚市場の動向は、こうした食文化全体とも密接につながっているのです。
日本人が知っておくべきこと
- 豚肉を買う場所:ハラールマークのある店舗では扱いがないため、Jaya Grocer・Village Grocer・チャイナタウンのウェットマーケットなど「Non-Halal」表示のある売場へ
- 中国産加工品に注目:安価なソーセージや缶詰は中国産の可能性があり、価格下落の恩恵を受けていることも。産地表示を確認する習慣をつけると◎
- バクテーのスープ素はスーパーで購入可能:Aeon・Jaya Grocerの乾物コーナーで手に入り、自宅でも簡単に作れます
- 豚肉はマレー系の友人・同僚への手土産には不向き:宗教的背景から、贈り物の際は事前確認が大切です
まとめ
中国の豚肉市場が歴史的な低迷に入っていることは、マレーシアの食品流通にも少なからず影響を与え得る出来事です。直接的な価格転嫁は限定的ですが、輸入加工品の価格変化という形でじわりと影響が及ぶ可能性があります。
マレーシアで豚肉を日々の食材として愛用している日本人の方は、スーパーで「中国産」の表示を見かけたとき、その背景にある世界規模の農業経済の変動に思いを馳せてみてください。
写真: Monika Guzikowska / Unsplash
出典: China Press の情報を元に、日本人在住者向けに独自作成した記事です。価格・条件は変更される場合があります。最新情報は公式サイトでご確認ください。


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