砂漠にスキー場?夢のプロジェクトが白紙に
「砂漠にスキー場」——そう聞いて、思わず首をかしげた方も多いのではないでしょうか。しかし、それはサウジアラビアが本気で進めてきた国家プロジェクトでした。そしてそのプロジェクトに関わっていたマレーシア上場企業の株が、2026年3月26日、一日で約30%も暴落するという衝撃的な出来事が起きました。
SENDAI(依华仙台)とは?
SENDAI(証券コード:依华仙台) は、マレーシアの建設・鉄鋼構造エンジニアリング会社です。橋梁や工業施設など、大型インフラの鉄骨工事を得意とするプレイヤーで、受注残(オーダーブック)はなんと RM20億2,000万(約667億円) 、入札中案件は RM184億(約6,072億円) という規模感を誇る中堅企業です。
日本でいえば、大林組や清水建設の海外向け鉄骨部門に近いイメージと考えると分かりやすいでしょう。
サウジの「砂漠の冬季リゾート」NEOM・トロジェナ計画
問題の現場は、サウジアラビア北西部に位置する 「トロジェナ(Trojena)」 。サウジが国策として進める超巨大プロジェクト「NEOM(ネオム)」の一部です。
| プロジェクト概要 | 内容 |
|---|---|
| プロジェクト名 | NEOM(総事業費5,000億ドル超) |
| 担当エリア | Trojena(山岳リゾートゾーン) |
| 主な施設 | 砂漠内スキーリゾート、高級ホテル |
| 目玉イベント | 2029年アジア冬季競技大会 開催予定地 |
| 契約締結 | 2024年3月 |
| 契約解除 | 2026年3月26日 |
NEOMは「ザ・ライン」(縦1線の未来都市)でも知られる、サウジのビジョン2030を象徴するメガプロジェクト。日本でいえば、大阪万博と東京五輪を合わせたような国家的なプレスティージがあります。
トロジェナはその中でも 標高2,400m以上の山岳地帯 を活用し、砂漠とは思えない四季のある環境を生かしたスキーリゾートを建設する計画。SENDAIはその鉄鋼構造(スキー施設の骨格部分)を担当する契約をサウジの建設会社「Al Bawani」と結んでいました。
株価が一日で29.6%暴落した理由
2026年3月26日朝、SENDAIは契約解除を電撃発表。
- 契約解除日: 2026年3月26日(即日)
- 株価: 開始値32.5センから 25セン に急落(▲29.6%)
- 理由: 「中東の地政学的情勢」(西アジアの不安定化)
29.6%という下落率は、東京証券取引所でいえば「ストップ安」に相当します(東証のサーキットブレーカーは通常±20〜30%)。マレーシア証券取引所(Bursa Malaysia)でも「跌停板(ていていばん)」=下限ストップと表現される事態です。
会社側は「商業的請求権と撤収費用(demobilization costs)の補償を求める」と発表しており、法的手続きへの移行も視野に入れています。
地政学リスクとは何か——中東情勢の影
「地政学リスク」という言葉は耳慣れないかもしれませんが、簡単にいえば「戦争・紛争・政治不安による経済的損失リスク」のこと。
2025〜2026年にかけて中東では、イエメン・フーシ派の紅海攻撃、イスラエル・ガザ情勢の長期化など、地域全体の不安定化が続いています。サウジアラビアは直接的な戦闘には参加していませんが、NEOMのような超大型プロジェクトの外国企業招聘や予算執行に影響が出始めているとも言われています。
日本企業でいえば、バブル期に海外の大型不動産を取得したものの、現地政治リスクで撤退を余儀なくされたケース——そのような「遠い夢」が現実に崩れた感覚に近いかもしれません。
日本人投資家へのメモ
Bursa Malaysiaへの投資を考えている方へ
この件は、マレーシア株式投資をする上で押さえておくべき教訓を含んでいます。
| チェックポイント | 内容 |
|---|---|
| 受注依存度 | 1件の海外大型案件への依存比率が高い銘柄は要注意 |
| 地政学リスク | 中東・アフリカ・新興国向け案件はカントリーリスクあり |
| オーダーブックの中身 | 総額よりも「案件の地域分散」を確認する |
| 下落時の流動性 | 跌停板(ストップ安)時は売りたくても売れない可能性あり |
マレーシア在住者・長期在住を考えている方へ
このニュース、「投資してない自分には関係ない」と思っていませんか?
NEOMのようなサウジの超巨大プロジェクトには、マレーシアの建設業・エンジニアリング業から多数の労働者・技術者が派遣されています。中東景気の変動は、マレーシア国内の建設市場・雇用・為替(MYR/SAR)にも波及することがあります。リンギット安の一因になる可能性も否定できません。
まとめ:夢のスキー場と現実の株価
「砂漠のスキー場」という壮大なビジョンの裏で、マレーシアの一企業が地政学リスクの直撃を受けた今回の出来事。2029年アジア冬季競技大会まであと3年、トロジェナ計画がどうなるのか、SENDAIの補償交渉がどう決着するのか——マレーシア株式市場を揺るがすニュースとして、今後も注目が集まりそうです。
マレーシアに住んでいると、こうした「世界とつながる経済ニュース」が身近に感じられるのも、この国の面白さのひとつですよね。
出典: China Press の情報を元に、日本人在住者向けに独自作成した記事です。価格・条件は変更される場合があります。最新情報は公式サイトでご確認ください。


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